急成長SaaS企業の特徴とそれらが実践する、マーケティングとは?


SaaSのマーケティングは、ブランド認知を高めつつ、長期的な視野でサービスを販売する手法です。急成長するSaaS企業が成功するためには、マーケティング戦略とその実践がシームレスに連携し、PDCAサイクルが適切に回ることが不可欠です。今回はそんなSaaS企業のマーケティングについて解説していきます。

SaaSマーケティング

目次

SaaSとは

SaaSとは「Software as a Service」の略称で、読み方は多くの場合「サース」ですが、「サーズ」とも言われます。

SaaSは、従来のソフトウェア提供形態とは異なり、クラウドサービス事業者がソフトウェアを運用し、ユーザーはインターネット経由でアクセスして利用するサービスです。これにより、従来の購入・インストールから解放され、利用契約を結ぶことで即座に利用可能です。月額や年額の利用料金を支払う形態が一般的で、一部無料版も提供されています。SaaSの導入により、利用者は柔軟で効率的なソフトウェアの利用が可能となります。

またビジネスシーンでの活用が進んでおり、チャットツール・グループウェアなど、さまざまなサービスがSaaS企業によって提供されています。以下は、いくつかの代表的なSaaSの例です。

※Saasとは

SaaSの特徴

SaaSは、リモートワーク・テレワークの普及とともに急速に広まっています。この普及にはいくつかの特徴が関係しており、また、その利用には独自の料金形態が存在します。

①:どこからでも利用可能なインターネットアクセス
SaaSはデータをクラウド上に保存するため、インターネットに接続すればどこからでも利用可能です。これにより、オフィス内に限らず、外出先や在宅勤務などでも柔軟な作業環境を提供します。パソコン、タブレット、スマートフォンなど様々なデバイスからアクセスできるのが特徴です。

②:複数人でのプロジェクト進行に適した機能
SaaSは複数のユーザーが同時にファイルの閲覧や編集が可能なため、プロジェクトや共同作業が円滑に進行します。異なる場所からでも同一のファイルにアクセスでき、リアルタイムでの共有と編集が実現されています。

③:サブスクリプション型の料金形態
SaaSが有料の場合、一般的には「サブスクリプション型」が採用されています。利用者は定期的にサービス提供者に対して支払いを行い、その間は安定したサービスの利用が可能です。プランの変更やオプションの追加がない限り、料金は一定であり、これが継続的な収益をもたらすメリットとなっています。

これらの特徴により、SaaSはインターネット接続が可能な状況であればどこでも利用でき、多人数での協力作業や柔軟な利用形態を可能にしています。

SaaS企業のマーケティングとは

SaaS企業のマーケティングは、サービスの特徴の強化、効果的なコミュニケーションの展開、顧客との持続的な関係の構築と強化という三つの柱に基づいています

SaaSサービスの独自性や付加価値を明確にし、市場における他の競合企業との差別化を強化することが求められます。そのためには、サービスの強みやユニークな特徴を強調し、顧客の関心や期待に応えるコミュニケーション戦略を展開することが不可欠です。これには、効果的な広告キャンペーンやコンテンツマーケティング、ソーシャルメディアの活用などが含まれます。

また、市場のニーズやトレンドの変化に柔軟に対応するために、顧客フィードバックの収集と分析が重要となります。この情報を基に、サービスの改良や新機能の開発を行い、顧客の期待に応える形でサービスを進化させていくことが求められます。これにより、既存の顧客がサービスに長期間利用し続ける動機付けを強化し、また新規顧客の獲得にも寄与します。

SaaS企業がマーケティングを行う際のポイント

SaaS企業がマーケティングを行う際のポイントは下記通りです。

1.ユニットエコノミクス「CAC」と「LTV」

2.データドリブンマーケティングの強化


3.ツールの有効活用


それぞれについて解説します。

1.ユニットエコノミクス「CAC」と「LTV」

SaaS企業におけるマーケティングでは、ユニットエコノミクスと呼ばれるKPIが重要な役割を担います
まずは、CAC(顧客獲得単価)と LTV(顧客生涯価値)についてそれぞれの言葉の意味について解説します。

CAC(Customer Acquisition Cost)顧客獲得単価

CACは、企業が1顧客を獲得するために必要なマーケティングや営業のコストを示す指標です。SaaSビジネスでは、全体の顧客獲得に要した総コストを表す際に利用されます。企業によっては、この「全てのコスト」には広告宣伝費、人件費、代理店販売手数料、外注費などが含まれる場合もあります。低いCACを実現することは、利益の増大に寄与するため、企業はこの指標を下げる努力をしています。

※CACと似た意味合いの言葉に「CPA(顧客獲得単価)」がありますが、こちらは1つの顧客獲得に必要となったWeb関連の広告費を表す場面に用いられます。

LTV(Life Time Value)顧客生涯価値

1人または1社の顧客が契約を開始してから終了するまでのサイクルで、自社に対してどれだけの利益をもたらしてくれるかを示す指標です。 SaaS業界では「顧客生涯価値」としても知られており、LTVという用語が広く使用されています。 この指標は、取引ベースの視点から長期的な価値を評価するのに役立ちます。

ユニットエコノミクス

ユニットエコノミクスは、1顧客あたりの収益性を示す指標です。
この指標を算出する際には、以下の計算式が用いられます。


【ユニットエコノミクスの計算式】
ユニットエコノミクス = LTV(顧客生涯価値)÷ CAC(顧客獲得単価)

この式によって、企業が1つの顧客を獲得する際の平均的な収益を把握することができます。

2.データドリブンマーケティングの強化

データドリブンマーケティングは、データに基づいてマーケティングの意思決定を行う手法です。徹底的なデータ活用を通じて、主観的な意思決定を避け、客観的なデータに基づいた施策を展開します。以下は、データドリブンマーケティングを実施する際の手順です。

  1. データ収集 
    適切なデータを収集し、マーケティングに関する包括的な情報を取得します。

  2. データの可視化 
    収集したデータを整理し、可視化することで、情報を理解しやすくします。

  3. データ分析 
    データを詳細に分析し、傾向やパターンを把握します。これにより、効果的な施策の立案が可能になります。

  4. アクションプランの策定 
    データから得られた情報を基に、具体的なアクションプランを立てます。これはマーケティング戦略やキャンペーンの改善点に焦点を当てたものです。

  5. 具体的な施策を実施 
    立てたアクションプランに基づいて、実際のマーケティング施策を実施します。

  6. 効果測定 
    実施した施策の効果を評価し、定めたKPIに対する達成度を測定します。

データドリブンマーケティングは、循環的なプロセスを通じて持続的な改善を可能にし、マーケティング戦略の最適化に寄与します。

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3.ツールの有効活用

SaaS企業が効果的なマーケティングを展開するためには、様々なツールを適切に有効活用しています。これにより業務効率の向上やパフォーマンスの向上が期待できます。以下に、マーケティングに役立つ主要なツールの種類を紹介します。

  1. CRM(顧客管理システム):
    • 顧客情報の管理と分析が可能。
    • カスタマージャーニーを追跡し、パーソナライズされたアプローチを可能にする。
  2. MA(マーケティングオートメーション):
    • マーケティングプロセスを自動化し、リードの生成やナーチャリングを効率的に行う。
    • Eメールキャンペーン、セグメンテーション、スコアリングなどの機能を提供。
  3. ABM(アカウント・ベースド・マーケティング):
    • 重要な企業やアカウントに対してターゲティングを行い、パーソナライズされたアプローチを実現。
    • ターゲットアカウントに焦点を当てた戦略の展開が可能。
  4. アクセス解析ツール:
    • ウェブサイトやアプリのトラフィックやユーザー行動の解析。
    • インサイトの収集を通じてウェブサイト改善やコンテンツ最適化を行う。

これらのツールを戦略的かつ統合的に活用することで、SaaS企業は効果的なマーケティングキャンペーンを計画し、競争激しい市場での優位性を確立することができます。

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まとめ

SaaS企業のマーケティングは、クラウドベースのサービスを提供する際の独自性や付加価値を最大限に活かし、市場の顧客獲得と維持のための戦略的取り組みが求められます。そのための鍵として、ユニットエコノミクスの指標であるCACとLTVの最適なバランスの追求、データ駆動型のマーケティング戦略の展開、そして効果的なツールの活用が重要となります。これらの要素を組み合わせることで、SaaS企業は持続的な成長と市場での競争優位性を確立することができます。
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